あの頃のクラブで出会った忘れられない残念な人

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-Photo by Chan Walrus from Pexels

90年代の前半、東京でアパレル店員をしていた頃は、勤務先が移動すれば夜の遊び場も少しだけ変わったりしていて。

あの当時、クラブで遊ぶという事は、アパレル業界で販売員として仕事をする事の一部でもあったんですよね。

世の人々のファッションの動向や傾向を見るための、自分たちへの投資というか。

あれは都内で働きだして3年目だったか、会社のワンルームマンションを出て横浜に一人暮らしを始めると同時に、会社にお願いをして横浜勤務にしてもらったことがありました。

横浜のショップは、服飾の専門学校を卒業しているメンバーが勢揃いしていたので、オシャレも遊びも最先端。

そんなメンバーに、「今はこのクラブが熱いんです!」といって連れていかれたお店は確か246号沿いにありました。

私が友人や前にいたショップのメンバーたちとよく足を運んだクラブと、そう離れていない場所。

クラブなんだけれど、少しディスコっぽい雰囲気という印象を受けたような。

しかし、許容範囲を超えるほど混んでいないし、選曲の感じも気に入ってしばらく通うことに。

知らないお客さんに知らないバーテン、そして知らないDJ。

新しいクラブを開拓したので早速、同期で今でも仲の良いKを誘いある夜、二人でそこへ遊びに出かけました。


彼女も割と気に入って、飲んだり踊ったり、お喋りしたりと楽しい時間をひとしきり過ごした後、そろそろ場所を移動しようかという事になり。

出口に向かって歩いていた時、突然がっしりと誰かに腕を捕まれまして。

驚いてその人を見ると、どこから湧いて出たのかキムタク似(その当時やたらと多かった男性のタイプ)のイケメン。

しかし、次の瞬間、彼が口にした言葉は「あの、あなたの友達とお話がしたいんですがいいですか?」とかいうようなセリフ。

は?

ですよね。

私の心の声は、”そんな事は本人に直接聞けば?”でしたが口からでた言葉は「あ、はい、私は大丈夫ですけど、彼女にも聞いてみますね」。

私の友人Kは、無茶苦茶可愛い人で服のセンス、物の見方が人並み外れていて面白くて、私は彼女と一緒にいることがいつも誇らしかった。

そんな彼女に「ちょっとーキムタク似の彼、Kと話したいらしいよ」と皮肉たっぷりに伝えて、テーブル席へ戻り私は別のテーブルの席に座り、ぼんやりとタバコを吸いながら時間潰し(今は非喫煙者です)。

すると、近くに座っていた見ず知らずの男性が「友達の付き添い?大変だね」とかなんとか言って話しかけてきた。

なんとなく面倒くさかったので知らんぷり。

そんな中、ニコニコしながら私のテーブルに来たKとキムタク似のイケメンは、友達の家に行って一緒に飲まないかと言う。

その”友達”というのが、私に「大変だね」と話しかけてきた男でした。

妙な偶然。

まぁ、そんなに悪い気もしていないKにその夜は付き合うつもりで、4人で男の住むというアパートに移動。

男は、そのクラブの近所に住んでおり「青山」の住人でした。

それで、キムタク似のイケメンは社会人で青山の住人は、とあるスポーツの補欠選手をしていたけれど足を負傷してしまったため、休職中というか無職と悲しげに語っていて。

部屋にはユニフォームが飾ってあり、私もその時は少々その男を気の毒に思いました。

しかし、4人で和やかに飲みながら会話が進む中、休職中の男が何を思ったのか突然、”王様ゲーム”をやろう!と言い出したため場の空気が一転する。

”王様ゲーム”って私、生まれてこの方やった事もなければ、やりたいとも思わない。

そんなゲームをする人たちの事をダサすぎると思っていましたし、どこのどんな人達がそんな事をしようと言い出すのだろうとずっと疑問に思っていて。

「王様ゲーム」がわからない方はググってね♡

あの頃はまだ若く、潔癖すぎる面もあったとは思いますが、今もその気持は変わっていない。

その男、「青山」住まいで、ある種のスポーツをやっていたというのは嘘ではないというのを体型が証明するほど、シュッとしていて全てのセンスも悪くなかったのに”王様ゲーム”がやりたいと?

この男、完璧に終わっていると思いました。

ハッキリと私が「嫌、やりたくない」といったのが、男の逆鱗に触れたらしく青山の住人は大暴れをしはじめる。

それは駄々をこねる子供。

二十歳を超えた大人なのに。

私が気味悪いなこの人と思いながら、暴れて周辺の物に当たり散らす男を見ていたら、Kは場を収めるため私に、ちょっとだけ付き合ってあげようと言い出した。

断固として拒否する私。

それを見てさらに暴れる男。

ついに、私にまで暴力を振るおうとした男をキムタク似のイケメンが止めたのでした。

羽交い締めになった男を見て、「帰るから」といいバッグを取り、玄関までスタスタと歩いていった私に小走りでついてきたK。

私が玄関でバッグを床に置き、靴を履いていると後ろから「帰るなよ〜」と泣きそうな声で叫んでいた男。

かと思えば次の瞬間、羽交い締めを外されたのか後ろから駆け寄ってきて、私のバッグを開け放たれた玄関から外へと蹴飛ばしやがった。

私の”栗きんとん”の包み紙にも似た、インポート物の、元値はウン十万もするお気に入りの勤め先のブランドのバッグを。

もともとは短気な私。

頭に血が上り、カーーーーーッとなりましたが、その時はKと無傷でそこから退去することが優先されたため、捨て台詞なども吐かず無言でバッグを拾いその場所を去りました。

アパートから出ると同時に悪態をつく私、それをなだめるK。

そこへ、走って追いかけてきたキムタク似のイケメンは、あんな残念な男のために必死になって謝り普段はいいヤツなんだけど、という。

”普段はいいヤツ”というのも到底信じられないし、あれがまさに女性に平気で暴力を振るう種類の典型的なDV男なのだと思いました。

それで、キムタク似のイケメンは、愛車ミニクーパーでその日はクラブまで遊びに来ており、最寄りの駅まで私たちを送ってくれたのでした。

私は車の中でずっとDV男の悪口と、いかに王様ゲームが馬鹿馬鹿しくて嫌いかということを話し、私たちが車を降りるまで何度も謝罪してくれたイケメン。

東京での夜遊びは、楽しくてうれしくて愉快な思い出が多いだけにこういう、不愉快な体験は頭の中で浮き彫りのようになっていて、ハッキリと覚えていたりします。

ちなみに、キムタク似のイケメンとKはもしかして、ひょっとすると今でも友人関係が続いているのかもしれませんが当時、恋愛沙汰には発展しませんでした。

多分、イケメンがいい人過ぎました。

Kも私も考えてみれば、クラブでの出会いが真剣交際に発展していった事がないな。

出会った方々は大概、ショップに遊びに来てランチに行ったり、お茶したりその後、友達の友達まで呼んで合コンしたり。

あのままあの生活を続けていたら、私の人生はまた違ったものでしたね。

しかし、楽しいだけの時間もどこかで区切りを付けていかないと、飽きが来てしまうもので。

それが年を重ねてゆくということなのでしょうか。

あの頃、体験した全てのことが今、生活を楽しむためのヒントに繋がっている気はしていますけどね♪

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