-Photo by Gary Campbell-Hall–
今回は、恥を忍んで私の経験談(失敗談)をお話しますね。
私が西海岸に遊学をしていた頃の話です。
その時、通っていた語学学校の生徒は年齢も出身国もさまざま。
主にヨーロッパ、ブラジル、アジア(ほぼ日本)からの割合が多かった。
その中でも、ヨーロッパ、ブラジルから来ていた留学生の年齢層は若く21歳以下もまずますおりました。
21歳以下というとアメリカの法律ではお酒が飲めないんですよね。
自分達の国で既に、タバコもお酒もクラブ遊びも許可されていた若者たちはホームパーティーだけでは、満足できなかったらしく。
私を含めた私の周りの日本人は21歳を超える人ばかり。
それで、日本人の友人たちを通し仲良くなったスイス人の若者らに、メキシコのクラブへ遊びに行こうと誘われたんですよね。
メキシコの飲酒の年齢制限は18歳以上なので。
しかも、メキシコと言ってもティファナです。
ティファナは、アメリカのサンディエゴから国境を越えたらすぐの街。
最近では、麻薬戦争などの影響から危険レベルの高い街で渡航は止めてくださいと注意警告が出ているみたいですが、当時は昼間なら日本人の観光客向けのお買物ツアーなどがあった時代。
夜は車で行っても、駐車している間に荒らされパーツを盗まれたり、スリや強盗には注意が必要とは聞いておりました。
しかし、若者って脳やホルモンが未発達で無謀なので。
その当時の私もあまり彼らと変わりありませんでしたけどね、年を取っているだけで。
それでも一度は断りましたよ。
少しばかり私の中にもある理性というものが働いて。
けれども、ティファナ行きを決めた張本人のスイス人Fに罪悪感があったんです。
クラスメイトは仲が良く、皆で毎日のようにランチを食べに行っていたのですが、そこで無知だった私が、彼に言ってはいけない一言を発してしまいました。
それは、日本人からすると褒め言葉に当たること。
私の口から放たれた言葉で一瞬、ランチテーブルを囲んでいた皆が凍りつき、その様子を見て私も何かが起こったとは思いましたが原因はわからず。
後に、日本人で彼とルームメイトだったHにその説明を受けました。
スイス人Fは、双極性障害(躁うつ病)を患っており、彼が鬱に陥ってしまう原因のトリガーとなる言葉を私が彼に言い放ってしまったのだと。
次にFと顔を合わせたとき、本当に申し訳なかったと謝罪しました。
周りの皆の気遣いのお陰もあり、その後も普通に付き合えるようになりましたが、彼にとってはこの留学生活が療養でもあったそうです。
その”繊細”なスイス人Fが、ティファナでナイトクラビングをしたいと言い出したんですよ。
罪悪感と、少しあったティファナへの興味が気持ちが後押しして、クラスメイトの日本人とスイス人の子たちで、ティファナへナイトクラビングに出かけることにしたんです。
車は、盗まれたり荒らされたりするリスクがあるからと徒歩で国境を超えました。
ティファナの街まで続く歩道橋は、小さな子どもからお年寄りまで、物乞いの人々であふれその光景には言葉もでませんでしたが。
そこへ行くまでに、絶対誰にもお金を恵んではいけないと注意を受けておりました。
一人にあげてしまうと、次々と人が押し寄せ身動きが取れなくなってしまうからと。
貴重品を斜めがけのポシェットに入れていた私は、身を固め、友人みんなとできるだけ離れないように歩きその場所を突破。
なんでここまでして、ティファナなんかにナイトクラビングに来たんだろう。
という後悔は一瞬でかき消されてしまう。
街のクラブはクレイジーで刺激的で楽しかった。
メインの通りは、右も左も窓のない吹きさらしのクラブが立ち並び、さまざまな音楽が鳴り響く。
何件もはしごしてはテキーラやカクテルを飲んで、踊るの繰り返し。
そんなクラブでも、お手洗いにはペーパータオルをくれる係の方がいて、チップを渡すと割と安全な感じがありました。
朝方までそんな事が続いて。
帰り道、あの国境近くの歩道橋で恐怖の出来事は起こったのでした。
朝方まで馬鹿騒ぎをしていた私たちは、当然、帰り道はクタクタで固まっても歩かず、一列にしかも間を開けて一人ずつ歩いていたんですよね。
私も一人。
すると、小学一年生くらいの男の子が私の目の前に立ちはだかり、ビーズの首飾りを私の顔に差し出して買って!と。
いらないと言い首を横に振ると、そこへ8〜10人ほど同じ年齢くらいの子供たちが集まってきて、”おしくらまんじゅう”のようになり歩けない。
それに気づいたスイス人Fが、「WATCH OUT YOUR PASSPORT!!(パスポートに気をつけて)」と怒鳴ったけど、ポシェットを押さえた時は既に遅かった。
財布は、いくつも伸びていた小さい手の中から取り返しましたが、パスポートを盗んだ少年は素早く走り去り。
その少年を追って走り出した、人一倍正義感の強い日本人のHとその後に続いたR。
とにかくあっと言う間の出来事で、残された私たちはそこで立ち尽くしていたのですが、スイス人のFに、ここで待っていても危険だし仕方がないからと諭され、国境でメキシコの入国管理局の人に事情を説明することに。
メキシコ警察のシステムは機能していないので、話しても何の役にも立たないのです。
話をすると「There is nothing you can do. You can go to US and apply for a new Passport.(私には何も出来ることがないため、アメリカに戻りパスポートを申請しなさい)」などとシンプルに言われ、あっさりアメリカ側に通されました。
友人がまだメキシコにいるんだけど、と言ってはみたのですが、パスポートの無い私が滞在していてはいけないとの事で私だけアメリカへ。
スイス人Fはメキシコ側でHとRを待つことにして。
といっても、からからと回る鉄でできた遊具?のようなもので、アメリカとメキシコが仕切られているだけなので、姿も見えるし気軽には話せる位置におりました。
そして、1時間も経過していなかったと思いますが、HとRは息を切らせて走って戻ってきたんです。
Hは、私のパスポートを振りかざしながら。
私は飛び上がりありがとう!!!!!と何度も言いましたが、ほんの少しの間にパスポートはボロボロになっていた。
瞬間すぐに、二人の命が無事で良かったと思いました。
話を聞くと、ああいった窃盗にはティーンや大人のボスがいて、次々とパスポートが彼らの手に渡っていくのだとか。
日本のパスポートはとても優秀ですから高く売れるらしく。
HとRは勢いだけで、彼らの陣地へ乗り込みパスポートを奪い返して来てくれたのでした。
何が起こってもおかしくない犯罪の街で。
本当に本当に無事で良かった。
ちなみにHは男性でRは女性、スイス人Fは男の子。
他にもメンバーがいたと思うのですが、誰がいたのか思い出せません。
しかし、彼らの貧困さと卑劣なやり方を間近で見て傷ついてしまった正義感の塊のようなHは、もう二度とティファナには行かないと言いました。
私の不注意で、あんなに楽しそうにはしゃいでいた彼の気持ちを、奈落の底へ突き落としてしまったことを深く反省しました。
今思い出しても、感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいです。
そして、その後。
スイス人Fは、全くティファナでの出来事に懲りておりませんで。
子供でしたからね。
それで、また行こうとしつこい。
クラスが同じだし、ランチやお茶にも一緒にいるしで正直うっとうしかったのですが、病気ですから。
そうそう無下にもできず。
Fはスイスのフランス語の地域育ちのため、フランス語を話すのですがそのせいか、友達になるのはフランス語圏内の人たちが多かった。
その中でもベルギー人の女の子がティファナのディスコに行きたがり。
あのティファナにディスコがあるのかって話ですが、Fが仕入れてきた情報によれば、あの”街”から車で20分ほど行った先にある高級ホテルの中に素敵なディスコがあるのだとか。
それで、今度はタクシーで行くから絶対大丈夫!パスポートは君のも僕がしっかり持つからと。
そんなことに安全の保証などない事はわかっておりましたが、また行きましたよね。
私も学ばない人なのです。
恩人であるHやRには、ほとほとく呆れられましたけど。
もう国境はどう越えたか覚えてもいないのですが、ディスコは富裕層の若者で溢れかえっていて、私が退屈だった事は覚えております。
ま〜、ベルジャンの彼女はトム・クルーズやケビン・ベーコンに似た感じのキラキラした若者達に口説かれ、楽しそうにはしゃいでいましたね。
Fはディスコの選曲にノリノリで満足そうにしており、私はただの子守で酔いもせず終わったメキシコの夜でした。
私の親友はこの時期、旅行中で不在だったんですよね。
彼女も大人で、彼女は人生の転機で留学をしていたのですが、夜な夜な出かけるクラブの帰り道
「ここで私が何に襲われ命を落としたとて、車の事故で死んだとて、誰も私に同情してくれる人はいないね。チャラチャラと遊んでるからそんな目に合うんだよ、とか言われるだけだわ」。
という思いを頭に巡らせハンドルをにぎっていたと言っていました。
全ては自己責任。
彼女の言葉に私も深く同感。
海外旅行や留学をご検討中の方は、その事をお忘れなく。
って私に言われたくないですよね♪
反省はしましたが、全く後悔をしておりません。
良い経験になったと思っています。
それも命あっての物種ですが…。
何十年後かにはしっかりブログのネタにもしてしまっているという。
スイス人のFとはSNSで繋がっているのですが、立派な大人になり元気にスイスで暮らしているようです。
親友と、一度はスイスに遊びに行きたいねと話しているのですが、お金と時間の余裕が今はない。
皆さまも夏のバケーションは、上手く危険を回避しながら思いっきりはじけて楽しんでくださいね♡
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